日税不動産鑑定士会 会の調査研究


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日税不動産鑑定士会の研究と刊行物は

 日税不動産鑑定士会では毎月、会員の勉強会を開いて、税理士・不動産鑑定士である立場から、特に、不動産の税務と鑑定評価についての調査・研究を続けてきました。その成果の一つとして、継続地代の実態を昭和49年から3年ごとに継続調査し、その成果物を「継続地代の実態調べ」として刊行しています。
 同書は、鑑定業界内での貴重な資料とされているほか、平成9年版の経済白書(P99)には、これらの資料の一部が引用されたり、国会国立図書館からも寄贈の要請を受け納本しています。
 また、この実態調べが地代の紛争解決のために、裁判所における調停にも役立っていることや、地代の鑑定評価の重要な参考資料に位置づけられています。ここに【目次全文】【本文の一部】をご紹介します。
 本書の価格や販売等に関する問合せ先についてはこちらをクリックしてください。

【「継続地代の実態調べ」資料等のご利用に当ってのお願い】
 本書「継続地代の実態調べ」に掲載の資料等のご利用に当っては、地代という賃貸人・賃借人の個人情報にかかるものですので、特に個人情報保護法をお守りくださるようお願いいたします。
日税不動産鑑定士会 会長 下ア 寛

                   
【目次全文】
※無断掲載・複製禁止
平成27年版
継続地代の実態調べ

− 目  次 −


T 平成27年版(第14回)「継続地代の実態調べ」をめぐって
 日税不動産鑑定士会  継続地代の実態調べ取り纏め事務担当 株式会社横須賀不動産鑑定事務所 不動産鑑定士 林達郎 -------------- 5
 はじめに -------------- 5
 1.平成27年版「継続地代の実態調べ」の概要
   (1)調査目的・調査方法等
-------------- 7
   (2)資料の収集方法と調査事項 -------------- 9
 2.平成27年「継続地代の実態」調査結果
   (1)収集資料数
-------------- 10
   (2)地代水準 -------------- 10
   (3)地代の変動状況  ---------------12
   (4)継続地代の平均的活用利子率(土地価格に対する支払地代の割合) ---------------13
 3.地価と継続地代と固定資産税等について
   (1)地価と地代と固定資産税等の関係
---------------16
   (2)公租公課の推移について ---------------16
   (3)継続地代(支払ベース)の公租公課に対する倍率 ---------------19
 おわりに ---------------20


U 平成27年版 継続地代の実態調査の分析結果データ

 別表1〜1
 東京都23区における「継続地代水準(3.3u当たり平均の月額地代)」の推移
その1 高度商業地の場合 ---------------26
 別表1〜2
 東京都23区における「継続地代水準(3.3u当たり平均の月額地代)」の推移
その2 普通商業地の場合 ---------------28
 別表1〜3
 東京都23区における「継続地代水準(3.3u当たり平均の月額地代)」の推移
その3 住宅地の場合 ---------------30
 別表2〜1 東京都23区商業地における「継続地代の平均的活用利子率」の推移
(土地価格に対する支払い地代の割合)の推移 ---------------32
 別表2〜2 東京都23区住宅地における「継続地代の平均的活用利子率」の推移
(土地価格に対する支払い地代の割合)の推移 ---------------34
 別表3 東京都23区における「地代の変動状況」 ---------------36
 別表4 東京都23区における支払地代額の公租公課に対する倍率 ---------------38
 別表5 東京圏における地価公示の地域別対前年変動率 ---------------39
 別表6 平成27年版「継続地代(更新料を含む)の実態調べ」調査票 ---------------40


V 平成27年1月1日現在継続地代の実証事例
 資料1 継続地代及び更新料等調査表
---------------43
 資料2 東京都23区における「継続地代の平均的活用利子率」
(土地価格に対する地代の割合)  商業(業務)用地系の場合 --------------97
 資料3 土地価格に対する地代の割合(活用利子率) 東京都23区:商業地
--------------99
 資料4 東京都23区における「継続地代の平均的活用利子率」
        
(土地価格に対する地代の割合)  住宅地の場合 --------------117
 資料5 土地価格に対する支払地代の割合(活用利子率) 東京23区:住宅地
--------------119
 資料6 東京都23区における支払地代額の公租公課に対する倍率 --------------151
 資料7 東京都23区商業地系における支払地代額の公租公課(固定資産税・都市計画税)に対する倍率
--------------153
 資料8 東京都23区住宅地における支払地代額の公租公課(固定資産税・都市計画税)に対する倍率
--------------161


<編集後記>

--------------179

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【本文の抜粋】
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 平成27年版(第15回)
「継続地代の実態調べ」をめぐって
日税不動産鑑定士会
「継続地代の実態調べ」取り纏め担当
   株式会社横須賀不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 林 達郎
はじめに
 日税不動産鑑定士会では、3年毎に継続地代についての調査を実施し、その結果を冊子に取り纏めて刊行してきました。今回、その第15回目となる調査結果が纏まり、平成27年版(第15回)「継続地代の実態調べ」として刊行する運びとなりましたが、その任を下崎会長より小職が命ぜられましたことを先ずはご報告申し上げます。
 ところで、本実態調べは、建物所有を目的とする借地権すなわち既存の借地権に係る地代(定期借地権を除く)を対象としています。
 借地権に関して、現行は「借地借家法」により律せられていますが、この「借地借家法」は平成3年10月4日法律第90号として制定され、平成4年8月1日に施行されました。
 一方、この法施行時に現存していた既存の借地権は、戦前から、そして戦後の高度経済成長によってもたらされた旺盛な宅地需要を背景に設定された借地権が主流であり、これらは地主の正当事由を具備した更新拒絶が無い限り更新されて法的には半永久的に存続することができます。なぜなら、法付則4条但し書きにおいて「・・・・廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。」として、いわゆる「旧借地法」が適用されるためです。
 半永久的に更新が繰り返されて地主への返還はほとんど認められない状況にあれば当然、新規の貸地をする地主は減少の一途をたどります。
 なお、新法に基づく普通借地権についても、多少は改善されたとはいえ相変わらず返還までの道筋は遠く、新たに契約が締結される例は極めて少ないのが実情です。
 そんな中でも、特に利用目的を見いだせなし大地主さんにとっけは放置しているよりは良いという意味で、権利金を授受して借地権を新規に設定する例もみられるようになってきました。
 今回得られた事例の中の8件はそういった事例です。
 ただ、全般的には終戦直後は都内の土地の大半は借地であったといられていたものが、@借地人が底地を買い取る、A底地人が借地権を買い取る形で減少し続け、B最近では、借地人が自ら借地の返還を申し出でるような形で借地契約を終了し、自然に借地契約が消滅するような案件も散見されます。  このように借地契約の事例数が年々減少し、現在では残り僅かとなっている状況です。
 そんな中、また個人情報保護法により協力が得にくくなる中、日税不動産鑑定士会会員や会員以外の税理士・不動産鑑定士の皆様、そして情報提供に承諾してくださった地主・借地人の皆様に支えられて、今回第15回の発刊にこぎつけられた次第です。
 ご協力いただきました皆様には心から感謝を申し上げます。
 ご覧のとおり、旧法の普通借家解約は減少の一途をたどっていますが、今回の調査でも見られた新法での「普通借地契約」の数が徐々に増加することにより、やがては終焉を迎えるかもしれない「旧法借地権」の後を担う「新法の普通借地権」のデータを整備することにつながれことになるのかも知れません。

 新法による事例も、「普通借地権」であることは変わりませんし、まだまだ数は僅かですが、今のところは特に旧法の事例との水準の格差は認められなかったところから、統計に占める影響はほとんど無いと考えますが、今後もこれらを含めた継続時代の推移を分析していくことが、新たな時代に即応した、調査につながるような気がします。
 今回収集された事例数及び、これまで収集していた事例数の推移は下のとおりです。



「表1」継続地代の実態調べの実施時期及び収集事例数


 ところで、継続地代の実態調べがこれまで長きにわたり発刊されてきた経緯等に触れたいと思います。
 これまでの継続地代については、各事例の地価との関連や地域のほかの地代等の情報が殆ど見当たらない状況にありました。
 とりわけ不動産市場の中でも借地市場は閉鎖的であり、賃貸借の当事者以外にはその地代等、殆ど公開されることがありません。従って、地代事例を得ること自体が至難の業です。
 そこで、昭和40年代の末頃、不動産鑑定士と税理士の両資格を有する会員で交際される任意の研究グループ(日税不動産鑑定士会)が中心となり、地代の鑑定評価や地域社会に役立つことを検討した結果、「継続地代の実態調べ」を実施することとなったものです。
 そして、これに賛同してくださった他の税理士・不動産鑑定士等の多くの方々の協力を得ることが出来、東京都及びその周辺地域を主ととする「既存の借地権にかかる事例」を収集し、その地代の実態に関する調査を実施、「継続地代の実態調べ」として取り纏めていました。その後も3年ごとに実施してきたものです。
 昭和49年を第1回目として、ほぼ41年間における東京都及びその周辺地域の「既存借地権の地代に関する実態」のデータが蓄積されたことになります。
 なお事例収集においては、社会に有用なデータとなることはご理解いただけても、なかなかご自身の地代が公表されることはためらいがちです。そこで、これまでは枝番は開示せず番地まで、というお約束のもとデータを開示していましたが、本年度から更に開示基準を厳格化し、番地は提供せず、丁目までの表記の留め、更には面積も小数点以下は丸めるといった対応をとることにより、個人情報の特定が不可能な状態に加工して、情報提供を行うこととなりました。
 こうして、やっと一定数が収集された後に、それらの必要事項の点検等を行った上で、事例を住宅地図(ブルーマップ)で確認するのですが、最近は地図に名前が記載されないものが多くなりました。
 個人宅なら特に問題はないのですが、商業地でも空き店舗などが多くなり、居宅か店舗かの特定に難儀するようにもなりました。そこで、グーグルマップのストリートビュー機能を用い、地図で対応できなくなった部分を補い、精度を高めるようにしています。
 これらの一連の確認作業を行った後、以下の調査方法によって分析を進めていくことになります。

1.平成27年版「継続地代の実態調べ」の概要

(1)調査の目的・調査方法
 まず、調査時点(平成27年1月1日現在)における東京都23区及びその周辺の地域を主とする「借地権にかかる継続中の地代事例」を収集しました。これまで旧法のみと謳っていましたが、8事例は新法の普通借地権も含まれています。
 また、これまでは契約の用途と地図をもとに、商業地系・住宅地系を判断し分析を進めておりましたが、今回からはアンケート用紙にも用途的地域(地域の標準的な利用)の項目を設け、これを基準に商業地系・住宅地系の振り分けを行っております。大半の住宅地に振り分けていたものはそのまま住宅地系のままですが、中には用途が共同住宅であったがために住宅地系に分類していたものが、地域の特性を考慮して商業地系に変更されているものがあります。
 その他は、前回までと同様に東京都23区における「地代の水準(平均地代月額)」「地価に対する地代(支払賃料)の割合(活用利子率)」「地代の変動状況」及び「地代の公租公課に対する倍率」について取り纏めました。
 ただ、借地契約はもともと長期間に亘って継続されるものであり、その経緯や個別的事情等が多様になってきています。 同一場所の同一地主との契約においても、その賃料等は多様な状況に変化していることが多いのが実情です。
 こうしたことから、この実態調べにあたっては、それら個別事情等を追求するよりも(商業地・住宅地とかの地域の別、実際の用途、あるいは堅固・非堅固等の建物利用の状況の一定枠内に留めることにして)、むしろ、相当数の事例を実証的に取り纏め、地域における地代の水準がどの程度のものなのか、地価との関係がどのようになっているのか等といった分析を行うことの方が、より実態を反映するものと判断しました。また、時系列で捉えられる必要も踏まえ、これまでと同様のフォームによって実施をしています。


 【今回の調査期間における地価の動向】
 前回調査時の平成24年においては、「平成23年3月に発生した未曽有の東日本大震災により、不動産市場は一時的に停滞したが、被災地を除き比較的早期に回復傾向を示している」としていました。その後、地価下落が縮小傾向に向かい、徐々に震災復興需要やアベノミックスによる金融緩和の影響により、景気が上向いてくると、地価は上昇に転じ始め、今回の平成27年の地価公示を見ても、前回と比べると上昇しています。なお路線価については、3年前と比較して商業地はほとんどが上昇し、住宅地では微増もしくは横ばいのものが多く見られました。
 因みに、平成25年〜27年の地価公示における住宅地(表bQ)及び商業地(表bR)の地域別対前年変動率を示すと次の通りと発表されています。

「表2」地価公示における住宅地の地域別対前年変動率
資料:国土交通省


「表3」地価公示における商業地の地域別対前年変動率
資料:国土交通省

(2)資料の収集方法と調査事項
 調査時点現在(平成27年1月1日)における賃貸借が継続中の既存の借地権に係る地代額(直前の地代の改定状況等を含む)、更新の状況とその期間等、用途別、地上建物の状況等の条件、調査日の直前年度(平成26年度)の固定資産税等(得られる場合)について、各々回答を得、それらの集計・分析を行っています。
 なお、これまでは実際の利用状況のみをアンケートに回答していただいておりましたが、本年からは用途的地域の項目を増設いたしました。
 旧来は実際の用途が商業であれば、商業地域にあるものが借地の場合は多かったのですが、長い年月の間に用途が混在し、それが崩れてきた感があります。
 実際の用途と地域性が異なることが徐々に増え、また回答の中で商業用となっていても、実際上は殆どが店舗の上に居宅があるようなものが多く、課税上は小規模住宅であったりするのが多いこともわかってきました。
 加えて、最近では勝手の商業地域に共同住宅が多く建ち並び、利用用途が共同住宅・店舗付き共同住宅等の回答が多くなりました。  そこで、一部は入れ替わりが生じるものの、これまでのデータとの整合性がもっともよく図られて、かつ将来に渡って一般に受け入れやすい基準は、地域性であると判断し、地域性(商業地域・住宅地域)を重視して、分析することを明確にしました。そのために、実際の用途のみならず、用途的地域というアンケートを加えることにした次第です。


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2.平成27年「継続地代の実態」結果概要
(1)収集資料数

   資料総数…628件
   内、東京都23区…540件
 注)ここ数回の実態調べにおいては、事例数が減少してきています、その要因としては、
@ 建物の老朽化等に伴い増改築等を迫られている借地人は、承諾料等の支払いが必要となることから、この機会に底地を買取って完全所有権とする方が得策と判断し、底地を買取るケースが増えてきていました。背景には地価の下落が続いたため、既存借地権価格を考量した底地の価格が相当に低位水準となって、底地を購入し易くなっていることも一因とおもわれます。
A 相続により底地が物納された場合に、当局が借地人に底地買取りを求めるケースが多い状況もあり、また国有財産の処分を進める目的から、積極的に底地の売却が進められていることも一因でしょう。
B昔からの借地権の場合その建物が老朽化し、空き家になっているものが増えてきました。借地人には底地を買う資力もなく、更新料を払う資力もない方が多く見受けられます。ましてや立替え承諾料や建物建築費も払えません。仮に払ったところで、すでに別宅があり、誰が済むわけでもありません。
 そういった状態で、借地権を保全するため地代を払い続けるのは重荷になり、借りていても仕方がないといった状態に陥るためです。
 そうかといって、権利を売買市場において譲渡するにしても、建物が老朽化した状態では、値が付きにくい実情もあります。
 そもそもながらく割安に貸してくださった土地で、契約が満了すれば建物を取り壊してお返しする約束で借りていたとの認識もあり、無償でお返しするか、建物だけは地主さんに取り壊しをお願いする形で借地契約を終了する事例も散見されるようになりました。


(2)地代水準
 これまでと同様に、調査時(平成27年1月1日)の継続地代の平均月額を東京23区の各区別、用途別(高度商業地・普通商業地・住宅地)に区分して集計したところ、 26〜31頁の「別表bP−1〜1・2、1−2〜1・2、1−3〜1・2」の通りでした。
なお、これら東京都23 区の用途別平均地代額について、過去の実態調べのデータと比較して、平成12年から平成27年の間の6回分にかかる推移をみると「表bS」の通りです。 (昭和49年〜平成6年分は割愛。)
 この「表bS」に見られるように、東京都23区における
平成27年1月1日現在の
・住宅地の平均地代は月額1,075円/3.3u程度であり、
・普通商業地のそれは住宅地地代の1.88倍の月額2,021円/3.3u程度、
・高度商業地のそれは、住宅地地代の13.29倍、普通商業地の7.1倍の月額14,291円/3.3u程度となっていました。

  また、前回(平成24年1月1日現在)における
・住宅地地代の平均月額は1,110円/3.3uでしたので、今回もほほ横ばいの推移といえます。
・普通商業地の前回調査におけるそれも月額1,963円/3.3uですので、同様にほほ横ばいの推移でした。
・高度商業地の前回調査においては、月額12,592円/3.3uであり、今回の調査では約13%の増加になっています。
 ただし、高度商業地にあっては中央区銀座といった極めて繁華街性が高い地域の高額の事例が前回に比べて格段に増加したことが要因と思われ、こうした地域の事例如何によって平均地代額が左右されることになることは否めません。従って、これによって地代が上昇していると判断するのは早計かもしれません。
 なお、住宅地・普通商業地等のいずれの地代も、一般的にはほぼ横這いの推移であった状況は、次の (3) 地代の変動状況からも伺えます。

「表4」東京都23区における3.3u当たり平均地代月額の推移
(注)1.平均地代月額の算定に当たっては、地代事例のうち「税法上の相当の地代」の事例等の特殊なもの及び駐車場や資材置場等の場合は除外してある。
  2.高度商業地とは、主として「銀座」「日本橋」「新橋」「有楽町」「渋谷」「新宿」「池袋」等(路線価、概ね1000千円以上)の繁華街をいうが、
   「新小岩」商店街等の旧来からの商店街や繁華性に富む駅前商店街等(路線価、概ね500千円以上の駅前商店街)も含まれている。
  3.各区別、用途別の詳細は、別表1-1〜1・2、1-2〜1・2、1-3〜1・2の通り。

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(3)地代変動の状況
 今回収集の東京都23区の地代事例のうち、前回調査時(平成24年1月1日時点)及びその前の地代額が判明している事例について、今回調査時までの3年間における地代の変動状況がどのようなものであったのかを調べてみました。
 その結果を次項U「別表bR〜1・2」に纏めたところ次の通りです。
@ 商業地系の場合
・地代の推移が判明した事例 152件のうち、
   131件が変動なし(86.2%)
    16件が値上げ (10.5%)・・・1件平均値上げ率 18.8%
    5件が値下げ ( 3.2%)・・・1件平均値下げ率 △6.1%
A 住宅地系の場合
・地代の推移が判明した事例 229件のうち、
    169件が変動なし(73.8%)
    58件が値上げ (25.3%)・・・1件平均値上げ率 9.6%
    2件が値下げ ( 0.9%)・・・1件平均値下げ率 △29.2%
B 工業地系の場合
   ・地代の推移が判明した事例 2件のうち、2件が変動なし(100%)

       このように、商業地、住宅地ともに大半が変動なし(概ね横這い)という形で推移いていました。
 なお、値上げ又は値下げの事例は、かねてより改定交渉等にあったものが、更新年あるいは一定の合意を見て、相当長期間における調整等から大幅な値上げ又は値下げがあったものと推測される事例が殆どであり、20年、30年ぶりの改定もみられました。
 その他、毎年のように固定資産税等の変動に連動する形で僅かな改定を少しづつ実施している例もみられます。
 なお、工業地の事例は、全ての地代が据え置かれている状況で、値上げ値下げともに確認されませんでした。
 これらは平成12年度の調査から同様の傾向が継続しています。

 地代の改定は、地価の動向とは後追いとなる固定資産税等の動向を受けて、さらにその後追いとなって実施される関係から、平成8年度頃までは増徴されていた固定資産税等が、 平成9年度から引下げられ、地価はその後に若干の回復傾向となったものの、公租公課は負担調整措置等によりそれほどの増徴にはなっていません。
 ただ、平成21年の評価替えの時期には、ミニバブルの影響から急激に評価額が上昇する状況がみられていました。 しかし、これについても、固定資産税の激変を緩和する措置が設けられ、その後のリーマンショックにより地価が急落した影響もあり、税額についてはその後落ち着きを見せ、平成24年以降はおおむね横ばいとなる例が多くなっています。
 なお、平成27年の評価替えにより、上昇した地域もあるとのことですが、今回の調査は平成27年1月1日時点のものであり、その傾向は表れていません。

ただ、いずれにしろ数多くの借地契約が長い年月の間に消滅していくなか、長い間生き残ってきた事例ですので、相応の借り得がなければ、これらの契約は残らなかったであろうことを思うと、地代に動きがないのも頷けます。


(4)継続地代の平均的活用利子率
   ……(土地価格に対する支払地代の割合)

 これまでの実態調べと同様、東京都23区において土地価格(更地価格=公示地価ベース)を元本としたときの継続地代(支払地代年額)の割合(これを当会の調査では「活用利子率」と呼ぶ)が、どの程度のものなのかを検討し、土地の価格と地代との相関関係について調べました。
 なお、この土地価格の把握にあたっては、これまで同様に相続税路線価をもとに、公示地価に対する路線価の割合が概ね80%程度とされることを踏まえ、その路線価を80%で割戻した公示地価ベースの更地価格によって求めています。
 なお、極端に利回りの高い、相当の地代に引けをとらないような地代は排除し、商業地系と住宅地系との用途的地域別に分けてその土地の価格(更地価格)と支払地代年額との割合(比率)を算定しています。
 その商業地と住宅地の用途別における東京都23区全体の「平均的活用利子率」を見ると次のとおりです。
平成27年1月1日現在の平均的活用利子率
 ・東京都23区 商業地の場合・・・ 1.19% (185件平均)
  (土地の更地価格 × 1.19% = 年額換算支払地代)
・東京都23区 住宅地の場合・・・ 0.72% (335件平均)
   (土地の更地価格 × 0.72% = 年額換算支払地代)

この活用利子率を前回のデータと比較してみると、
 ・前回の平成24年においては
  商業地 1.37% ・・・(183件平均)
  住宅地 0.79% ・・・(375件平均)
であったのに対し、
  ・今回の平成27年の平均的活用利子率は、
     商業地で 1.19% ・・・ ∴前回対 13.1%下落 
    住宅地で 0.72% ・・・ ∴前回対 8.9%下落 
  となっています。

 東京23区においては、前述のとおり、平成2年後半頃より地価は上昇傾向となり、その後も商業地・住宅地ともに地価の上昇傾向が続いていますが、地代は上記のとおり殆ど横這い傾向の推移であったため、活用利子率は下落する結果となったものと思われます。
 地代は地価が上昇あるいは下落傾向となっても、それがストレートに値上げや値下げ等に反映されるわけではなく、上記変動状況に見られるように地代は殆どが横這い傾向にあり、短期間にはあまり地価との連動は見うけられないことが確認されます。
なお、この東京都23区全体の「平均的活用利子率」について、平成12年からのデータとともに時系列に纏めると「表bT」のとおりです(昭和49年〜平成9年分は割愛)。
 

「表5」東京都23区における継続地代の平均的活用利子率の推移
    (平均的活用利子率=土地価格に対する支払地代年額の割合)

(注)東京都23区における継続地代事例のうち、客観的な地価が判明したものについて、その土地価格に対する地代(支払賃料年額)の割合を求め、それらの各区の平均的
  割合を求め、それらの各区の平均的割合、即ち土地を元本としたときの平均的活用利子率を算定したものである。
  この客観的な時価は、不動産市場で取引される現実の時価ではなく、その地点の相続税路線価を80%で除して求めた価格を時価とみなしたものである。
  なお、角地や敷地が奥まっていること等が確認されたものについては一定の補正を行い、地域の標準的な利子率が得られるように努めた。
  ただし、不動産市場での現実の取引価格をもとにこの活用利子率を乗ずると、答えが異なる場合が生じることに留意。
  

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3.地価と継続地代と固定資産税等について
(1)地価と地代と固定資産税等の関係

 第11回(平成15年)調査から、地代とその土地にかかる固定資産税等(以下「公租公課」という)の倍率について調べています。
 地代は、既述のとおり、その土地を使用する対価であるから、本来的には地価との間に相関関係が認められるとされながら、昭和30年代後半頃からの高度経済成長以降、地価の急激な上昇に対して地代は法令(旧借地法)の制約等もあって追随し得なくなり、特にバブル期の異常な地価の高騰に対しては、地価との相関関係は全く希薄なものとなってしまいました。
 もっともその後、バブルがはじけ地価が急落していったこともあり、以前ほどの極端な乖離はなくなりましたが、これにつられて借地権として借り得という強みも以前よりは薄れてきたようです。
 ところで、地代の改定(増額)は、旧借地法においても公租公課の増徴等の経済変動を論拠にされることから、その一定倍率を乗じた額によって地代の改定を要求するケースが多くなりました。地代収入に占める必要諸経費が、主に公租公課であることを論拠として、地代値上げに当たっての説得力を有することとなったものといえましょう。


(2)公租公課の推移について
 土地に対する公租公課は、その土地利用すなわち地上建物等の用途によって異なる課税がなされており、宅地については、さらに非住宅用地(商業地等の業務用地)と住宅用地に分け、住宅用地は更に小規模住宅用地と一般住宅用地とに分けて課税されています。
 税額は、「その年度の課税標準額×税率」により算定されるが、その課税標準額については、3年に一度評価替え(見直し)が行われる評価額に基づき、用途や負担の増減等に配慮して調整が行われてその年度の課税標準額が確定されているのですが、さらに、住宅用地についての課税標準額は、住宅という生活の基盤であることに配慮し、小規模住宅用地(1住宅200u以下)と一般住宅用地(1住宅200u超の部分)に分け、小規模住宅用地については、現行 1/6に、一般住宅用地については 1/3に軽減されています。
 また、住宅用地以外の非住宅用地についても、小規模宅地については20%の軽減をする等の税額軽減措置がとられているのが実情です。(ただし、個人または中小企業が所有するものに限られます。)
 このように、宅地に対する固定資産税等の課税は複雑になっており、その宅地の税額等を調べることは簡単にはいきません。厳密にはその年度の課税にかかる納税通知書に添付される「課税明細書」を基にしなければ厳密にその宅地の個別の税額は把握できないのです。
 こうした事情からか、今回の実態調べにおいても、その税額を把握できた事例の提供は少ない状況にあり、限られた地域における限られた事例の分析結果となっていることは否めず、このことを踏まえて参考にして頂ければと思います。



「表6」商業地等の宅地と住宅用地の課税の仕組み(平成26年度)
  (注1)政府税制調査会第1回基礎問題小委員会(平成26年5月12日)資料より抜粋。
  (注2)評価額が急上昇した場合であっても、各年度の負担増は、原則、本来の税額の5%が限度。
    (=当該年度課税標準額を、「前年度課税標準額+評価額(×住宅用地特例率×5%」により算出)。
  



(公租公課の近時の推移)
 前述のとおり、土地の公租公課は、原則、3年に一度評価替え(見直し)が行われる評価額をもととするその年度の課税標準額により課税されるが、地価の上昇等を反映してその評価額も上昇すると、その評価額に対するストレートの課税は負担増となることに配慮し、一定の減額特例等の調整措置を行った「課税標準額」によって課税されていいます。
 従来、その一定の調整措置等によって、課税標準額は地価が上昇時にも相当低位に抑えられてきたので、バブル崩壊後における地価の下落を反映してその評価額は下げられたとしても、課税標準額はさらにその評価額よりも下回っていたというのが実態でした。
 このため、その評価額の一定水準に達するまでは課税標準額を引き上げざるを得ないということで、バブル崩壊以降、地価が下落局面に転じているにもかかわらず、固定資産税等の課税標準額は引き上げられてきました。
 特に、「土地基本法」制定による平成4年の公的土地評価の均衡化・適正化を受けての固定資産税評価額の大幅改正が、平成6年度から実施されたことに伴い、固定資産税も大幅な増税となりました。
 これにより地価が下落傾向にもかかわらず、固定資産税等の公租公課は平成8年度まで上昇する状況となりました。
 そして、平成9年度の基準年度において、ようやく地価の下落が反映されることになりました。特に商業地の公租公課も平成9年度以降は減額されることとなったのです。
 この減額はその後6年間続いたのですが、景気回復等を受けて、平成15年度からは微増傾向となり、こうした傾向は平成19年度頃まで続きました。
 なお、住宅地の場合は、この間の減額も微減であり、増額も微増で僅少な推移となっています。
 平成26年現在でも、一部値上げや値下げがみられる他は、ほほ税額は横ばいの状況が継続しています。なお、平成27年においては、横ばいのほかは、上昇する地点も多くなると見込まれていますが、これらは今回の調査においては原則として反映されていません。


(3)継続地代(支払べース)の公租公課に対する倍率
 従来より、地代の改定は、その原価(必要諸経費)である公租公課の増徴を理由とし、その公租公課の一定倍率によって改定額を決定するケースが多い実態にありました。このため、地代改定にあたっての適正地代の鑑定評価においても、賃料評価に定められる一般的な四手法(差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法)の 他に、検証手段として「平均的活用利子率による方法」や「公租公課の倍率法」が広汎に採用されてきました。
 そして、第11回の調査(平成15年調査)よりは、そうした地代市場の実態を踏まえて公租公課の倍率についても調査をしています。
  その東京都23区における今回調査の平均倍率を見ると、38頁の「別表bS」に示すとおりであり、
 平成27年1月1日現在においては
 商業地系 ・・・ 4.05倍
  住宅地系 ・・・ 4.35倍
   となっていました。
 なお、住宅地系の倍率が高い傾向にありますが、これは住宅用地の減額特例により、住宅用地の課税標準額が商業地(非住宅用地)のそれより低位水準に抑えられていることから、公租公課も相当に低位となっていることに基因するものといえます。
 もっとも、商業地系に分類されている事例の中にも用途が店舗併用住宅等で実質的に小規模住宅課税となっているもの等が含まれている点にも留意が必要です。
   また、前回(平成24年1月1日)現在の調査においては、
  商業地系 ・・・ 3.81倍
 住宅地系 ・・・ 4.25倍
でした。
 今回、商業地系、住宅地系ともにその倍率が若干上昇していますが、これらは前回調査と同一地点の事例とは限らず、地域に偏重し、また、特に事例数の多少にもより、倍率の平均値に偏りが出ていることが原因と考えられ、これらをもって倍率が高まったと判断するのは若干問題があるかもしれません。
 ただ、平均の倍率がそれほど開差なく僅少差であることは、事例の精度はそれなりに確保されているものと思われます。
 ところで、公租公課倍率法は、表面的には、税額の何倍ということで、わかり易い反面、土地の利用状況によって金額が大きく左右されます。というのは固定資産税が土地利用によって大きく左右されるからです。また、一体画地のうち、一人の借地人が純粋に商業用(非住宅)で使っていたとしても、他の借地人が居住用で使用していた場合には、画地全体が小規模住宅として課税されるというケースもあります。
 税制をより深く知っていただくことと、周辺の用途と対象地の用途が同じであるか等を確認する作業が重要になります。


おわりに
 以上、平成27年版(第15回)「継続地代の実態調べ」の取り纏めを行い、その概要について述べてきましたが、大震災があり、徐々に復興需要や政権交代に伴うアベノミックス金融緩和なども相俟って、地価は上昇に転じてきました。
 しかし、こうした地価動向にあっても、地代の原価である固定資産税等は、その相当の後追いであること、また、政策的意図等から、税の特例措置が継続されていて、税負担にはそれほどの影響を与えていない状況にあります。
 これらから、特に地価上昇時にあっても、地価というより固定資産税等の増徴を理由に地代の値上げが行われてきた経緯もあり、また、固定資産税も特に変動がなかったために、地代はほとんどが横這いの推移であったといえます。
 ただし、改定をする際には20年分・30年分の差額を大幅に改定するような事例も見受けられ、長い間横ばいを保ちながらも、更新の度に大幅な増額改定を行い、新規賃料との差額を少しづつ埋めていくような賃料改定が多いことが確認されました。また、まれに下落改定がなされる場合があることが確認されました。

 ところで、旧借地の数は減少傾向にありますが、なかなか底地を売ることがなく、数が減少しないものがあります。それは宗教法人による借地です。
 法人税施行規則第4条により住宅地については公租公課の3倍以下であれば収益事業に該当しない低廉な地代とみなされ、法人税が課せられない仕組みとなっています。もともと住宅地不足を解消するという至上命題があり、低廉で貸し出せば公益事業と認める制度が設けられたわけです。
 そのため、寺社が地権者の場合には、公租公課の3倍以下の地代であっても争いとなる例は少ないようで、本書でも宗教法人が地権者である事例は多分に含まれています。
 一方で、このような恩典を与えられず、法人税や所得税が課せられる地主にとっては、低廉な住宅地の公租公課の3倍以下の地代では、とても不動産投資としての採算がとれるものではないのが実情でしょう。
 そんな中でも、多くの寺社の事例等に引っ張られて低廉に抑えられ、これが相場と認識されている例もあります。
 勿論、寺社とは異なる水準であるべきだということで、投資として適切な倍率ないしは利回りで貸しでされているものも多くあります。
 このような様々な事情が混在した事例の平均値が今回のものである点にご留意頂ければと思います。
 また、商業地系では、あまり税制面でも恩典が与えられていない非住宅のもと、小規模住宅の恩典が与えられている店舗付き住宅とが混在していますので、同じ公租公課倍率であっても、土地に対する利回りでは大きな差異があります。
 このように、単に公租公課倍率のみをみても、適切な地代の査定を行うことはできません。一つの指標だけに目を向けるのではなく、活用利子率や、その他契約の経緯、当事者の権利意識等も十分に考慮し、複眼的な見方をされることにより、より適切な地代水準のあり方を探ることができるのではないかと考えます。
 そのために今回は、活字が小さくなることを承知で、資料No.1の調査票にて、「地代」・「活用利子率」・「公租公課倍率」の全てを同時にご覧いただける体裁にしています。

  以上、平成27年版(第15回)「継続地代の実態調べ」を取り纏めさせていただきましたが、事例収集の困難さもさることながら、地代と地価との相関関係や地価と固定資産税等の公租公課の動向との関係が時とともに崩れてきている昨今では、適正な地代の評価も極めて困難となったきていると思われます。
 本書を取り纏めた私共でさえも、高い地代もあれば安い地代もあり、どれを参考にすればよいのかわからない状況に陥りがちですが、地主にも低廉な地代であっても他に使い道がないので地代が安くても合理性がある場合や、商業地の地主で本来であればもって有効利用ができるにもかかわらず、まったく採算がとれていない低廉な地代であると不満が蓄積している方もいらっしゃいます。
 また、借地人にしても、権利金を払った覚えがないのにも拘わらず、長年借りているので借地権があるのだから低廉なままでなければならないと主張する方もいれば、権利金を払ってないうえ、今は割安な地代なのだから今回の値上げは致し方ないと値上げに応じる借地人さんもいらっしゃいます。 その他にも、定期的に更新料を払っているか?といったことによっても当事者の借地権に対する認識に大きな違いが生まれてくるでしょう。
 これらが長年にわたって継続すれば、各事例の地代に大きな差が生じてくるのはむしろ当然のことのような気もしてくるのです。

  そんなことから、様々な契約当事者・経緯の事例が羅列されていますが、いずれも現実の賃貸事例であります。
 これらが収集されている本書に、皆様のさらなる緻密な分析が加わることによって、社会の何かしらのお役に立つようになれば、これに勝ることはありません。

 以上

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最新版 『継続地代の実態調べ』 「平成24年版」
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