日税不動産鑑定士会 会の調査研究


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日税不動産鑑定士会の研究と刊行物は

 日税不動産鑑定士会では毎月、会員の勉強会を開いて、税理士・不動産鑑定士である立場から、特に、不動産の税務と鑑定評価についての調査・研究を続けてきました。その成果の一つとして、継続地代の実態を昭和49年から3年ごとに継続調査し、その成果物を「継続地代の実態調べ」として刊行しています。
 同書は、鑑定業界内での貴重な資料とされているほか、平成9年版の経済白書(P99)には、これらの資料の一部が引用されたり、国会国立図書館からも寄贈の要請を受け納本しています。
 また、この実態調べが地代の紛争解決のために、裁判所における調停にも役立っていることや、地代の鑑定評価の重要な参考資料に位置づけられています。ここに【目次全文】【本文の一部】をご紹介します。
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【「継続地代の実態調べ」資料等のご利用に当ってのお願い】
 本書「継続地代の実態調べ」に掲載の資料等のご利用に当っては、地代という賃貸人・賃借人の個人情報にかかるものですので、特に個人情報保護法をお守りくださるようお願いいたします。
日税不動産鑑定士会 会長 下ア 寛

                             
【目次全文】
※無断掲載・複製禁止
平成30年版
継続地代の実態調べ

− 目  次 −


T 平成30年版(第16回)「継続地代の実態調べ」をめぐって
 日税不動産鑑定士会  継続地代の実態調べ取り纏め事務担当 株式会社横須賀不動産鑑定事務所 代表取締役専務 林達郎 -------------- 5
 はじめに -------------- 5
 1.平成30年版「継続地代の実態調べ」の概要
   (1)調査目的・調査方法等
-------------- 13
   (2)資料の収集方法と調査事項 -------------- 14
 2.平成30年「継続地代の実態」調査結果
   (1)収集資料数
-------------- 15
   (2)地代水準 -------------- 16
   (3)地代の変動状況  ---------------19
   (4)継続地代の平均的活用利子率(土地価格に対する支払地代の割合) ---------------19
 3.地価と継続地代と固定資産税等について
   (1)地価と地代と固定資産税等の関係
---------------22
   (2)公租公課の推移について ---------------22
   (3)継続地代(支払ベース)の公租公課に対する倍率 ---------------25
 おわりに ---------------27


U 平成30年版 継続地代の実態調査の分析結果データ

 別表1〜1
 東京都23区における「継続地代水準(3.3u当たり平均の月額地代)」の推移
その1 高度商業地の場合 ---------------32
 別表1〜2
 東京都23区における「継続地代水準(3.3u当たり平均の月額地代)」の推移
その2 普通商業地の場合 ---------------34
 別表1〜3
 東京都23区における「継続地代水準(3.3u当たり平均の月額地代)」の推移
その3 住宅地の場合 ---------------36
 別表2〜1 東京都23区商業地における「継続地代の平均的活用利子率」の推移
(土地価格に対する支払い地代の割合)の推移 ---------------40
 別表2〜2 東京都23区住宅地における「継続地代の平均的活用利子率」の推移
(土地価格に対する支払い地代の割合)の推移 ---------------40
 別表3 東京都23区における「地代の変動状況」 ---------------42
 別表4 東京都23区における支払地代額の公租公課に対する倍率 ---------------44
 別表5 東京圏における地価公示の地域別対前年変動率 ---------------46
 別表6 平成30年版「継続地代(更新料を含む)の実態調べ」調査票 ---------------40


V 平成30年1月〜4月現在継続地代の実証事例
 資料1 継続地代及び更新料等調査表
---------------51
 資料2 東京都23区における「継続地代の平均的活用利子率」
(土地価格に対する地代の割合)  商業(業務)用地系の場合 --------------131
 資料3 土地価格に対する地代の割合(活用利子率) 東京都23区:商業地
--------------133
 資料4 東京都23区における「継続地代の平均的活用利子率」
        
(土地価格に対する地代の割合)  住宅地の場合 --------------153
 資料5 土地価格に対する支払地代の割合(活用利子率) 東京23区:住宅地
--------------155
 資料6-1 東京都23区における支払地代額の公租公課に対する倍率 --------------201
 資料6-2 東京都23区における支払地代額の公租公課に対する倍率(契約用途・実際の用途を基準に比較) --------------202
 資料7 東京都23区商業地系における支払地代額の公租公課(固定資産税・都市計画税)に対する倍率
--------------203
 資料8 東京都23区住宅地における支払地代額の公租公課(固定資産税・都市計画税)に対する倍率
--------------203


<編集後記>

--------------247

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【本文の抜粋】
※無断掲載・複製禁止
 平成30年版(第16回)
「継続地代の実態調べ」をめぐって
日税不動産鑑定士会
「継続地代の実態調べ」取り纏め担当
   株式会社横須賀不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 林 達郎
はじめに
 日税不動産鑑定士会では、3年毎に継続地代についての調査を実施し、その結果を冊子に取り纏めて刊行してきました。今回、その第16回目となる調査結果が纏まり、平成30年版(第16回)「継続地代の実態調べ」として刊行する運びとなりました。
 本実態調べは、建物所有を目的とする借地権すなわち既存の借地権に係る地代を対象としています。(ただし、一部定期借地権の事例も掲載しており、そのことを注記の上、集計には含めない対応をしております。)
借地権に関して、現行は「借地借家法(新法)」により律せられていますが、この「借地借家法」は平成3年10月4日法律第90号として制定され、平成4年8月1日に施行されました。
一方、この法施行時に現存していた既存の借地権は、戦前から、そして戦後も高度経済成長によってもたらされた旺盛な宅地需要を背景に設定された借地権が主流であり、これらは地主の正当事由を具備した更新拒絶が無い限り更新されて法的には半永久的に存続することができます。なぜなら、法付則4条但し書きにおいて「・・・・廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。」として、いわゆる「旧借地法」が適用されるためです。
 半永久的に更新が繰り返されて地主へ返還されることはなかなか無いとなれば当然、新規に貸地をする地主は減少の一途を辿ります。
そんな中でも、旧法による借地権は徐々に併合等により解消され、一般借地権自体の数は減少傾向にあります。総務省統計による住宅の土地所有形態に関する調査を取り纏めると以下の通りとなっています。




「表1」住宅の借地権数とその他所有関係 総務省統計局「住宅・土地統計調査(5年毎)」


終戦直後は都内の土地の大半は借地であったと言われていたものが、@借地人が底地を買い取る、A底地人が借地権を買い取る、Bそして、借地人が自ら借地の返還を申し出るような形で借地契約の解消が進んできています。
また最近の特徴としては、不動産業者が底地を積極的に取得し、取得後にこれまで没交渉であった地代の増額改定交渉に乗り出す、そして交渉が折り合わないときは底地を買い取るよう促す交渉をするといった動きもみられます。
もちろん、借地契約を更新していく賃借人の存在も多いのですが、借地契約の総数は年々減少し、不動産の利用形態全体に占める割合は低下しているように思われます。
なお、新法に基づく普通借地権についても、多少は旧法に比べ内容が改善されたとはいえ相変わらず返還までの道のりは遠く、新たに契約が締結される普通借地権は極めて少ないのが実情です。
定期借地権であれば、基本的には土地は返ってきますので、そちらの利用は比較的堅調に伸びていることが統計からも読み取れます。
そんな乏しくなる一方の旧借地法に基づく希少な情報を提供することに承諾して下さった地主・借地人の皆様に支えられて、前回よりも多くの事例を得て、今回の発刊にこぎつけられました。
ご協力頂きました皆様には心から感謝を申し上げます。

ご覧のとおり、普通借地契約は減少の一途を辿っていますが、本書はそういった、やがては終焉を迎えるかもしれない「旧法借地権」のデータが中心の分析であることは予めお伝えさせて頂きます。
大半の借地契約が消滅していくなかで、長らく存続してきたわけですから、残っているだけの理由もあるかもしれません。ケースによっては没交渉により殆ど動きがなく、公租公課以下の地代にまでなってしまっているといった事例も含まれています。それも継続地代の実態の一面ではあるので、これも掲載をさせて頂いています。
ただ、没交渉の当事者の賃料の改定結果と、頻繁に継続的に相互に話し合い、建設的な地代交渉を経てきた当事者の地代水準では結果は大きく変わってくるということも尊重する必要があるかもしれません。
地代の難しいところは、没交渉であればあるほど、地代は横ばいとなり易く、借地人が有利になります。現に、それが故に借り得が広がってきた歴史があります。
しかし、地代を多角的な情報から検討すると、特に人口減少・高齢化という土地に対する需要が冷え込んでくるような今後の動向を予測すると、やがて弊害が生じてくることが想定されます。
安い地代(借り得)であればあるほど長期に渡って借りることが可能であり、低次の利用を続けていても、借りている側としてはあまり痛みを感じない側面はあることは否めませんので、このような部類の事例が増々残りやすくなってきます。
こういった特色がある事例ですが、現実問題として、本書の事例以外にはなかなか継続地代に関する資料を入手することが困難であり、平均地代水準や、平均活用利子率、平均の公租公課倍率が公表されているとなると、それを拠り所として交渉がなされ、数字が独り歩きしがちとなります。
ところが、場合によっては契約の経緯からみると、不適当な場合も生じ得るのです。
といいますのは、継続地代には地代家賃統制令等の当事者の意思ではどうにもならない歴史的な経緯や、その後の当事者の事情や契約の経緯、更新料の授受や権利金の授受があるか、もともとは畑や野原だった場所を貸し出しているのか、それとも戦前から市街地であった場所かなど、千差万別の契約形態、契約の過程をたどってきています。
これらの地代が一律に公表値と同じような水準であって良いとはとても言えません。
もっとも、一つの契約の経緯や事情を詳細に分析するには何日もの時間がかかりますし、多くの契約を過去から現在まで追跡することは専門家でなければ困難でしょう。その意味では、参考として、平均値を参考にしながら、「本件ではこういった事情があるので、公表されている平均より高くあってもよい。」とか、「個々の事情・経緯を分析して、平均よりも低くあってもよい。」といった目安としては活用して頂くことはありうるでしょう。
ただ、そのためには、一つの切り口から分析しても不十分で、多面的な検討が必要となります。
本書では、そのような多面的な分析をして頂けるように、地代水準・活用利子率・公租公課倍率・改定率といった観点から分析をしております。
そして今回は借地権の相続路線価割合も集計データの中にとり入れることにし、より地域環境を理解し易くしました。(活用利子率の表を参照ください。)
更に、公租公課倍率についてはこれまでは地域性に基づく倍率のみを検討しておりましたが、分析の切り口を追加しております。
具体的には、これまで公租公課倍率は地域の用途を基準に倍率を計算していましたが、実は、公租公課は敷地の上に建っている建物の用途によってそれ以上に大きな影響を受けるのが実態であることから、これに追加する形で、実際の建物の用途が非住宅・併用・住宅の場合にどのように公租公課倍率の実態が変わってくるのかも、検証ができるように改めています。
できれば一つの指標のみに着目するのではなく、契約を多面的に分析するとともに、個別の契約の経緯・事情についてもしっかりと踏まえたうえで、今後の継続地代の在り方についてご検討を頂ければ幸いです。

【最近の動向】
継続地代の場合は、とりわけ普通借地権として新規に建物を貸し出す事案が旧法ではあり得ないということ、そして、新法になってからの普通借地の事例も依然として乏しく、「継続地代と比較すべき新規地代とは何か?」という問いが常にございました。
この解として、完全とは言えないものの、定期借地権の事例の新設は多くみられます。また最近は借地権を解消した後の利用として駐車場の利用が多くみられ、これらの地代水準も比較的多くのデータが出回るようになってきました。
これらのデータは普通借地権ではないものの、いわゆる新規の地代という部類に該当するので、概念上の新規地代と比較して「現在の地代は高いのか、安いのか。」という議論には地代交渉の現場で頻繁に登場してきます。
インターネットの普及、新規の借地借家法にもとづく地代あるいは、駐車場使用料等の借地借家法の適用のない土地ニーズの相対的な需要の向上などを受けて、そういった地代の情報も当事者の交渉の中で利用されてくるのも時代の流れとして自然なことかもしれません。
基本的には継続地代の大半は土地を新規に何らかの形で貸し出した場合の地代と比べれば圧倒的に低く、いってみれば新規の賃貸市場からは取り残された状態にあるものが多いのが実態で、現在もその傾向は強いといえます。
これらは契約の種類が違うので、「水準が違って当然」とこれらについては目をつぶって交渉をする傾向もありました。
しかし、東京高裁の平成14年10月22日賃料減額確認請求控訴事件に象徴されるように、単純にそうも言っていられない状況も生じています。
といいますのは、この判決の中では、「借地権の地代は、従前借地法で賃借人の権利が強く保護されていることから、これを増額することが困難な状況が続いた。すなわち、借地法により賃貸人の解約権が制限されるため、増額を求める賃貸人の交渉力は限られたものとなり、勢い地代が不相当に低額であっても、これを適正化することが困難であった。しかし、借地法は、賃貸人の解約権を制限するのみであって、そのような解約権の制限は、賃借人が地代の減額を求める際の交渉力を強めるものではない。」と判示されており、借地権があるからといって、当然に割安に借りる権利があるわけではなく、借り得がある状態の賃料を更に割安に貸せとは言えないと明言しています。
判例は事件ごとに示されるもので、必ずしもすべての借地に対してこれを適用しなければならないわけではないのかもしれませんが、高裁の判決ということで、一定程度重く受け止める必要もあり、不動産業界(特に不動産鑑定業界)の中では一つのターニングポイントとなった判例ではあります。
確かに元はといえば、更地を貸し出したので、同じ建物所有目的の新規の地代水準が相応に高いのであれば、減額ではなく値上げを要求してもよいくらいの案件でした。
そんな中バブルが崩壊し、土地価格や公租公課が下がっていったわけですが、既に相当程度割安な状態の地代水準にあるのに、いろいろな理由をつけて更に値下げを要求することは、公平の観点からみて不適当ということは、非常に納得し易い結論でもありました。
実際、建物所有目的よりも低次の利用である駐車場の利用でさえ比較的高い地代が授受されている昨今の実情や、定期借地権の案件でも旧借地権の地代と比べると比較的高い地代授受の例が多い昨今の状況からすると、地代交渉のありかたも、時代とともに変わってくるのも自然なことかもしれません。
歴史を振り返ると、借地権の強弱は時代とともに変化しています。旧借地の事案の多くは権利金の授受なくスタートし、地代家賃統制令や賃料の粘着性から、地主の多くは土地を持っていても割安な地代しか収受できないものだという意識が長い年月の間に定着していた側面があり、一方借地人には割安な地代で長年貸されてきたため、時の流れの中で大多数がそれを当たり前に感じるようになり、そのため借地人はあたかも物権に準ずる強い借地権という強固な権利を持っており、当然に安く借りる権利があるかのような権利意識が、とりわけ都内では定着した背景がありました。
これが自然発生的な借地権と呼ばれるものの典型的な経緯ですが、こういった自然発生的な借地権については、バブルが崩壊し地価が下がり、公租公課が下がった状況があったとしても、裁判等で争うと、賃貸借の過去の経緯からすると、「現在の地代の額はなお適正地代からみて低額」と判断される可能性もあることに留意が必要です。
その意味では、継続賃料の判断においても、新規賃料(適正地代)の水準は把握しておく必要があり、旧借地法ではない他の種類の契約を代用してでも、土地を新規に貸し出した場合の地代としての適正額を一応確認しておくことは、賃料改定の方向性を確認する意味では必要な事項となってきているように思われます。
もちろん、@権利金を払っている場合やA借地権が譲渡を経ている場合、Bあるいは公租公課等を基準に地代を合意しているなど地代算定根拠を合意によって定めたりしている場合、C更には相応の更新料を借地人が支払って、割安に借りる権利を賃貸人との間で保全する措置を講じている場合等には、それなりに割安に借り続けることに対する共通認識があったりしますので、上記の場合と扱いが異なることもありうるかもしれません。
その意味で、割安に借りることの経済的利益(借り得)を有償で獲得・保全している場合と無償で自然発生的に生じただけという場合等では、地代交渉は必然的に変わって来ざるを得ません。
都内では高額な借地権価格が存在することを前提にして借地権が取引されることが多いのですが、これは現在の地代の額でも賃借人からみれば大きな借り得があり、それが故に相応の借地権価格という経済的な利益が借地人に生じている、つまり賃借人は相当に割安に借りているということの証でもあるのです。
反対に地方圏においてはこのように土地価格に比して割安に借りるという概念が殆どなく、借地権の価値あるものとしてそもそも認識されていないことの方が多いです。
こういった様々な見地から契約と向き合ったうえで、千差万別の本書掲載事例と向き合って頂ければ、誤った方向に継続地代を誘導することはなくなってくるでしょう。
加えて、時代の変化や法律・判例の考え方によって当事者の交渉は変わってきていますので、本書とともに様々な判例等も併せて探って頂ければと思います。
最後に、本書では地代と共に更新料についても調査を行っています。平成23年7月15日最高裁の判決によれば、更新料特約は有効としています。「更新料は賃料とともに賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。」そして、「更新料の支払にはおよそ経済合理性がないなどということはできない。」
その一方で、契約書に更新料の授受の定めがなければ更新料の支払い義務がないと解されるような文言も付されていました。 「更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃貸人と賃借人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃貸人と賃借人との間に更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。」 地代の中には口頭契約で始まったりするものも多く、当然こういった約定は契約書に書くような時代でもなかった背景もあり、契約書に更新料の定めがある契約の方が少ないかもしれません。
そのため、この判例を盾にして、更新料の授受を拒絶する借地人が増加している側面があるようなのですが、そうすると更新料を引き続き授受している方と、授受することを止めたという方の両者が存在することになります。
公平の観点からみると、更新料を授受する借地人と、授受しない借地人の実質的な賃料の差をどのように調整すべきか、非常に迷うことになりますが、果たしてどう地代に影響していくのでしょうか。
現実には様々な交渉が個別になされているようです。
ヒアリングによる更新料を払わない場合の調整方法の一端をご紹介すると、
@更新料を払わないのであれば、契約は更新しない。法定更新となるので建物が朽廃し借地権が消滅するまで待つ。その意味で受領しなくともよい。といった対処の方もいれば、
A周辺の多くの事案が更新料を払っている場合には、公平の観点からみて建替え時に建て替え承諾料に上乗せして、更新料相当も清算する。
Bこれまで支払ってきたのに、今回は更新料を支払わないならば、その期間に更新料を案分して賃料に上乗せする。
Cそもそも払う義務はないのだから、更新料を支払わずこれまでと同じ賃料を支払い続ける。
など実務的には、様々な対応がみられ、何れが正解なのかは明言できない混沌とした状況です。
残念ながら、本件の調査においても、それらの詳しい実態までは分析しきれておらず、あくまでも最近授受した更新料が分かれば、それも併せて記載して頂き、本書に掲載しているという状況にとどまります。
これらを踏まえて今後皆様が現実にどのような対応をされていくかについては、今後の動向を注視して参ります。また次回の調査の際のどのような対応をされたかアンケートにてご教示頂ければ、大変に有用な資料となります。
なお、今回収集された事例数及び、これまで収集してきた事例数の推移は次の通りです。


【本調査の背景】
ところで、継続地代の実態調べがこれまで長きにわたり発刊されてきた経緯等に触れたいと思います。
これまで継続地代については、各事例の地価との関連や地域内の他の地代等の情報が殆んど見当たらない状況にありました。
とりわけ不動産市場の中でも借地市場は閉鎖的であり、賃貸借の当事者以外にはその地代等、殆ど公開されることがありません。従って、地代事例を得ること自体が至難の業です。
そこで、昭和40年代の末頃、不動産鑑定士と税理士の両資格を有する会員で構成される任意の研究グループ《日税不動産鑑定士会》が中心となり、地代の鑑定評価や地域社会に役立つことを検討した結果、「継続地代の実態調べ」を実施することとなったものです。
そして、これに賛同して下さった他の税理士・不動産鑑定士等の多くの方々の協力を得ることができ、東京都及びその周辺地域を主とする「既存の借地権に係る事例」を収集し、その地代の実態に関する調査を実施、「継続地代の実態調べ」として取り纏めていました。その後も3年毎に実施してきたものです。
昭和49年を第1回目として、ほぼ44年間における東京都及びその周辺地域の「既存借地権の地代に関する実態」のデータが蓄積されたことになります。
なお事例収集においては、社会に有用なデータとなることはご理解頂けても、なかなかご自身の地代が公表されることはためらいがちです。そこで、前回からは更に開示基準を厳格化し、番地は提供せず、丁目までの表記に留め、更には面積も小数点以下は丸めるといった対応を取ることにより、個人情報の特定が不可能な状態に加工して、情報提供を行うこととしています。
こうして、やっと一定数が収集された後に、それらの必要事項の点検等を行った上で、事例を住宅地図(ブルーマップ)で確認するのですが、最近は地図に名前が記載されていないものが多くなりました。
個人宅なら特に問題はないのですが、商業地でも空き店舗などが多くなり、居宅か店舗かの特定に難儀するようにもなりました。そこで、グーグルマップのストリートビュー機能を用い、地図で対応できなくなった部分を補い、精度を高めるようにしています。また公租公課倍率を非住宅と併用、住宅に分けて詳細な分析ができるようにする観点から、不明瞭なものは、登記記録を取得し、建物の用途を確認する作業を増やしました。
これらの一連の確認作業を行った後、以下の調査方法によって分析を進めていくことになります。


1.平成30年版「継続地代の実態調べ」の概要

(1)調査の目的・調査方法
 まず、調査時点(平成30年1月〜4月現在)における東京都23区及びその周辺の地域を主とする「借地権にかかる継続中の地代事例」を収集しました。
前回までは1月1日時点としていましたが、頂くアンケートの中には、年度毎に改定される4月1日時点からの改定内容を回答して頂いているものも一定数を占め、4月を境に地代の多くが改定されている認識を新たにしました。
そこで、調査時点の範囲を1月1日時点と限定するのではなく、1月から4月時点の事例とすることで、折角頂いた事例データが埋もれてしまわないように改めました。
また、長年に渡って用途的地域(地域の環境)が商業地系・住宅地系かどうかの振り分けを行って、東京都23区における「地代の水準(平均地代月額)」「地価に対する地代(支払賃料)の割合(活用利子率)」「地代の変動状況」及び「地代の公租公課に対する倍率」について取り纏めてまいりましたが、借地契約はもともと長期間に亘って継続されるものであり、その経緯や個別的事情等が多様になってきています。
同一場所の同一地主との契約においても、その賃料等は多様な違いがみられることが多いのが実情です。
こうしたことから、実態調べにあたっては、それら個別事情等は追求せず(商業地・住宅地とかの地域の別、実際の用途、あるいは堅固・非堅固等の建物利用の状況の一定枠内に留めることにして)、むしろ、相当数の事例を実証的に取り纏め、地域における地代の水準がどの程度のものなのか、地価との関係がどのようになっているのか等といった分析を中心に行ってきています。その方針は基本的には変わりませんが、実際に利用されている契約の内容(建物の用途)については特に公租公課倍率に大きく影響することから、公租公課倍率に限っては従来の地域の用途に従った集計方法のほかに、実際の建物の用途を基準に分析を行い、倍率を検討するように工夫いたしました。また相続路線価も参考までに分析しています。
これらにより、これまで以上に多角的な分析が可能になっています。もちろんデータの継続性は重要ですから、フォームは基本的には削らず、項目を追加するのみで実施をしています。



 【今回の調査期間における地価の動向】
 前回調査時の平成24年においては、「平成23年3月に発生した未曽有の東日本大震災により、不動産市場は一時的に停滞したが、被災地を除き比較的早期に回復傾向を示している」としていました。その後、地価下落が縮小傾向に向かい、徐々に震災復興需要やアベノミックスによる金融緩和の影響により、景気が上向いてくると、地価は上昇に転じ始め、今回の平成27年の地価公示を見ても、前回と比べると上昇しています。なお路線価については、3年前と比較して商業地はほとんどが上昇し、住宅地では微増もしくは横ばいのものが多く見られました。
 因みに、平成25年〜27年の地価公示における住宅地(表bQ)及び商業地(表bR)の地域別対前年変動率を示すと次の通りと発表されています。

「表2」地価公示における住宅地の地域別対前年変動率
資料:国土交通省


「表3」地価公示における商業地の地域別対前年変動率
資料:国土交通省

なお、東京圏における地価公示の地域別対前年変動率の内訳については、46頁の「別表bT」を参照下さい。


(2)資料の収集方法と調査事項
47頁「別表bU」に示す調査票を各会員等に配布し、調査時点現在(平成30年1月1日)における賃貸借が継続中の既存の借地権に係る地代額(直前の地代の改定状況等を含む)、更新の状況とその期間等、用途別、地上建物の状況等の条件、調査日の直前年度(平成29年度)の固定資産税等(得られる場合)について、各々回答を得、それらの集計・分析を行う予定ではありました。
ただ、この中でも賃料改定が直近にあったとして、4月からの地代や固都税をご記入頂いている回答も多くみられました。
 そこで、調査時点を1月〜4月と幅広くすることで、アンケートの回答に相応する集計結果となるように期間を改めています。
また、旧来は実際の用途が商業系であれば、商業地域にある借地が多かったのですが、長い年月の間に用途が混在し、それが崩れてきた感があります。そこで、アンケート用紙には実際の用途と地域の用途を記載して頂ける項目を用意しています。
それに加えてグーグルマップ等で追跡調査をすることにより、回答の中で商業用となっていても、実際上は殆どが店舗の上に居宅があるようなものが多く、課税上は小規模住宅と同等であるものも少なくないことが判明しました。また、最近ではかつての商業地域に共同住宅が多く建ち並び、利用用途が共同住宅・店舗付共同住宅等というものが多くなりました。かつてのフォーマットですと、これらを住宅地に分類すべきか、商業地に分類してよいものか、編集者側でも迷い判断にブレが生じるようなことが多くなっていました。そこで前回からは、地域性はこれまで通り記載しつつ、実際の建物の用途も記載して頂けるように、地域の用途と実際の用途を区別して記載・分析ができるようにしています。


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2.平成30年「継続地代の実態」結果概要
(1)収集資料数

   資料総数…858件
   内、東京都23区…858件
 注)協力者への呼びかけを強化したことで、事例数が今回に限っては回復しています。しかし、これまで継続してきた事例の中には契約が終了し、借地権事態が消滅しているものも多くなってきているのが実情です。
@ 契約が終了し、駐車場となってしまい、掲載が叶わないものが多くありました。
A また、昔からの借地の場合その建物が老朽化し、店舗ももはや営業せず、しかし2階の店舗には居住目的で借地人が住んでいる例や、実質空家となっているものが増えて参りました。借地人には底地を買う資力もなく、更新料を払う資力もない。ましてや建替え承諾料や建物建築費も払えない状態かもしれません。
そうした取り残された状態の物件も多く、次の世代交代が待たれているといった状況ですが、地代も払えない状態となれば、やがて契約は消滅していくこともありうるかもしれません。
実際、借地権が売れるという考えにたどり着いていない方もいらっしゃいますし、仮に知識があったとしても、建物が老朽化した状態では、値が付きにくく、更新料や建替え承諾料や譲渡承諾料等も一気に調整を図るとなるとハードルは上がります。
そもそも地主が長らく割安に貸してくれていた土地という認識で、契約期間が満了すれば建物を取壊してお返しする約束なので、契約終了時にはお返しするか、資力がないので、建物だけは地主さんに取壊しをお願いする形で借地契約を終了する事例も散見されているのが実情です。


(2)地代水準
調査時(平成30年1月〜4月)の継続地代の平均月額を東京23区の各区別、用途別(高度商業地・普通商業地・住宅地)に区分して集計したところ、
32〜37頁の「別表bP−1〜1・2、1−2〜1・2、1−3〜1・2」の通りでした。
なお、これら東京都23 区の用途別平均地代額について、過去の実態調べのデータと比較して、平成15年から平成30年の間の6回分にかかる推移をみると「表bS」の通りです。(昭和49年〜平成12年分は割愛。)
この「表bS」に見られるように、 東京都23区における平成30年1月〜4月現在の
・住宅地の平均地代は月額970円/3.3u程度であり、
・普通商業地のそれは住宅地地代の2.44倍の月額2,370円/3.3u程度、
・高度商業地のそれは、住宅地地代の23.6倍、普通商業地の9.7倍の月額22,893円/3.3u程度となっていました。
 ただし、本年の高度商業地については、確かに都心部は地価が上がり、地代も上昇改定されている事案も見られ、特に高度商業地ほどその傾向は顕著でしたので、水準が上がった側面もありますが、全体としては中央区銀座の事例が多く得られた一方で、その他の高度商業地の事例の提供があまりなかったことから、事例の偏在度合いの違いにより、これまで以上の差が出ている部分があると言わざるを得ません。


また、前回(平成27年1月1日現在)における
・住宅地地代の平均月額は1,075円/3.3uでしたので、今回もほぼ横這いといえます。
数値としては微減なのですが、継続案件を調査したところ下落改定されていたものは全体の中でも一事例しかなく、他は横ばいか上昇改定でした。
・普通商業地の前回調査におけるそれも月額2,021円/3.3uですので、同様にほぼ横這いから微増という推移でした。
・高度商業地の前回調査においては、月額14,291/3.3uであり、今回の調査では60%の増加になっています。
  ただし、高度商業地にあっては、中央区銀座といった極めて繁華性の高い地域の高額の事例が前回に比べて格段に上昇したことが要因と思われ、こうした地域の事例如何によって平均地代額が左右されることは否めません。地代全体が倍近くまで急上昇していると判断するのは早計かもしれません。
なお、住宅地・普通商業地等のいずれの地代も、一般的にはほぼ横這いから上昇推移であったことは、次の (3) 地代の変動状況より如実に確認されます。

「表4」東京都23区における3.3u当たり平均地代月額の推移
(注)1.平均地代月額の算定に当たっては、地代事例のうち「税法上の相当の地代」の事例等の特殊なもの及び駐車場や資材置場等の場合は除外してある。
  2.高度商業地とは、主として「銀座」「日本橋」「新橋」「有楽町」「渋谷」「新宿」「池袋」等(路線価、概ね1000千円以上)の繁華街をいうが、
   「新小岩」商店街等の旧来からの商店街や繁華性に富む駅前商店街等(路線価、概ね500千円以上の駅前商店街)も含まれている。
  3.各区別、用途別の詳細は、別表1-1〜1・2、1-2〜1・2、1-3〜1・2の通り。

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(3)地代変動の状況
 今回収集の東京都23区の地代事例のうち、前回調査時(平成27年1月1日時点)及びその前の地代額が判明している事例について、今回調査時までの3年間における地代の変動状況がどのようなものであったのかを調べてみました。
 その結果を次項U「別表bR〜1・2」に纏めたところ次の通りです。
@ 商業地系の場合
・地代の推移が判明した事例 135件のうち、
   112件が変動なし(83.0%)
    23件が値上げ (17.0%)・・・1件平均値上げ率 23.82%
    0件が値下げ ( 0.0%)・・・1件平均値下げ率  −

A 住宅地系の場合
・地代の推移が判明した事例 356件のうち、
    286件が変動なし(80.3%)
    69件が値上げ (19.4%)・・・1件平均値上げ率 22.51%
    1件が値下げ (0.3%)・・・1件平均値下げ率 0.7%

B 工業地系の場合
   ・地代の推移が判明した事例 3件のうち、3件が変動なし(100%)

   このように、商業地、住宅地ともに大半が変動なし(概ね横這い)という形で推移していました。 なお、値上げの事例は、かねてより改定交渉等にあったものが、更新年あるいは一定の係争等を経て、相当長期間における調整等から大幅な値上げ改定がなされたものと推測される事例が殆どであり、20年ぶり、30年ぶりの改定もみられました。それでもこれまでよりはやや増額改定の割合が多く、また増額改定幅も大きくなっていました。
その他、毎年のように固定資産税等の変動に連動する形で、僅かな改定を少しずつ実施している例もみられます。
なお、戸建住宅の一件の値下げは、改定率も僅かで、実質的には横ばいと同視できますが、一応、周囲の割安な事例に引きずられる形で調整がなされたと目されます。
というのは、周辺の当該事例より安い複数事例はこれとは反対に上昇改定がなされており、当該事例はこれらよりは高かったため、僅かな下落改定が実施されているようでした。
このように既に割高な事例は時折周辺の事例に引きずられる形で下落改定されることもあることが、今では非常に稀な例ではありますが、一応存在することも確認されました。
 なお、工業地の事例は、全ての地代が据え置かれている状況で、値上げ値下げともに確認されませんでした。
 これらは平成12年度の調査から同様の傾向が継続しています。
 地代の改定は、地価の動向とは後追いとなる固定資産税等の動向を受けて、さらにその後追いとなって実施される関係から、平成8年度頃までは増徴されていた固定資産税等が、平成9年度から引下げられ、地価はその後に若干の回復傾向となったものの、公租公課は負担調整措置等によりそれほどの増徴にはなっていません。
ただ、平成21年の評価替え時期には、ミニバルブの影響から急激に評価額が上昇する状況がみられていました。しかし、これについても、固定資産税の激変を緩和する措置が設けられ、その後リーマンショックにより地価が急落した影響もあり、税額についてはその後落着きを見せ、平成24年以降は概ね横這いとなる例が多くなっています。
なお、平成27年の評価替えでは横ばいから微増程度の増長にとどまりますが、平成30年の評価替により都内の大半の固定資産税等が増長したのに合わせて、地代が値上げされている案件が以前より多くなっています。
今回の調査は平成30年1月〜4月のものであり、これまでとは変則的な部分もございます。一部平成30年4月にかかる事例に関しては、平成30年の評価替えの影響も含めて、地代が増額改定されているものがございました。
ただ、全般的には長い間生き残ってきた借地の事例だけのことはあって、没交渉となっている側面もあり、大多数の地代に動きがない状況でした。


(4)継続地代の平均的活用利子率
   ……(土地価格に対する支払地代の割合)

 これまでの実態調べと同様、東京都23区において土地価格(更地価格=公示地価ベース)を元本としたときの継続地代(支払地代年額)の割合(これを当会の調査では「活用利子率」と呼ぶ)が、どの程度のものなのかを検討し、土地の価格と地代との相関関係について調べました。
 なお、この土地価格の把握にあたっては、これまで同様に相続税路線価をもとに、公示地価に対する路線価の割合が概ね80%程度とされることを踏まえ、その路線価を80%で割戻した公示地価ベースの更地価格によって求めています。
 なお、極端に利回りの高い、相当の地代に引けをとらないような地代は排除し、商業地系と住宅地系との用途的地域別に分けてその土地の価格(更地価格)と支払地代年額との割合(比率)を算定しています。
 その商業地と住宅地の用途別における東京都23区全体の「平均的活用利子率」を見ると次のとおりです。
平成30年1月〜4月現在の平均的活用利子率
 ・東京都23区 商業地の場合・・・ 1.10% (151件平均)
  (土地の更地価格 × 1.10% = 年額換算支払地代)
・東京都23区 住宅地の場合・・・ 0.70% (468件平均)
   (土地の更地価格 × 0.70% = 年額換算支払地代)

この活用利子率を前回のデータと比較してみると、
 ・前回の平成27年においては
  商業地 1.19% ・・・(183件平均)
  住宅地 0.72% ・・・(335件平均)
であったのに対し、
  ・今回の平成30年の平均的活用利子率は、
     商業地で 1.10% ・・・ ∴前回対 8%下落 
    住宅地で 0.70% ・・・ ∴前回対 3%下落 
  となっています。

 東京23区においては、平成25年後半頃より地価は上昇傾向となり、その後も商業地・住宅地ともに地価の上昇傾向が続いています。平成30年の路線価も殆どの地点が上昇していますので、地代が横ばいとすれば、活用利子率は計算上下落して査定されます。今回はそういった結果が反映されていると思われます。 なお、この東京都23区全体の「平均的活用利子率」について、 平成15年からのデータとともに時系列に纏めると次頁「表bT」のとおりです(昭和49年〜平成12年分は割愛)。 また、各区別の「平均的活用利子率」については、38〜41頁の「別表bQ−1〜1・2、2−2〜1・2」のとおりです。

「表5」東京都23区における継続地代の平均的活用利子率の推移
    (平均的活用利子率=土地価格に対する支払地代年額の割合)

(注)東京都23区における継続地代事例のうち、客観的な地価が判明したものについて、その土地価格に対する地代(支払賃料年額)の割合を求め、それらの各区の平均的
  割合を求め、それらの各区の平均的割合、即ち土地を元本としたときの平均的活用利子率を算定したものである。
  この客観的な時価は、不動産市場で取引される現実の時価ではなく、その地点の相続税路線価を80%で除して求めた価格を時価とみなしたものである。
  なお、角地や敷地が奥まっていること等が確認されたものについては一定の補正を行い、地域の標準的な利子率が得られるように努めた。
  ただし、不動産市場での現実の取引価格をもとにこの活用利子率を乗ずると、答えが異なる場合が生じることに留意。
  

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3.地価と継続地代と固定資産税等について
(1)地価と地代と固定資産税等の関係

 第11回(平成15年)調査から、地代とその土地にかかる固定資産税等(以下「公租公課」という)の倍率について調べています。
 地代は、既述のとおり、その土地を使用する対価であるから、本来的には地価との間に相関関係が認められるとされながら、昭和30年代後半頃からの高度経済成長以降、地価の急激な上昇に対して地代は法令(旧借地法)の制約等もあって追随し得なくなり、特にバブル期の異常な地価の高騰に対しては、地価との相関関係は全く希薄なものとなってしまいました。
 もっともその後、バブルがはじけ地価が急落していったこともあり、以前ほどの極端な乖離はなくなりましたが、これにつられて借地権として借り得という強みも以前よりは薄れてきたようです。
 ところで、地代の改定(増額)は、旧借地法においても公租公課の増徴等の経済変動を論拠にされることから、その一定倍率を乗じた額によって地代の改定を要求するケースが多くなりました。地代収入に占める必要諸経費が、主に公租公課であることを論拠として、地代値上げに当たっての説得力を有することとなったものといえましょう。


(2)公租公課の推移について
 土地に対する公租公課は、その土地利用すなわち地上建物等の用途によって異なる課税がなされており、宅地については、さらに非住宅用地(商業地等の業務用地)と住宅用地に分け、住宅用地は更に小規模住宅用地と一般住宅用地とに分けて課税されています。
 税額は、「その年度の課税標準額×税率」により算定されますが、その課税標準額については、3年に一度評価替え(見直し)が行われる評価額に基づき、用途や負担の増減等に配慮して調整が行われてその年度の課税標準額が確定されているのですが、さらに、住宅用地についての課税標準額は、住宅という生活の基盤であることに配慮し、小規模住宅用地(1住宅200u以下)と一般住宅用地(1住宅200u超の部分)に分け、小規模住宅用地については、現行 1/6に、一般住宅用地については 1/3に軽減されています。
 また、住宅用地以外の非住宅用地についても、小規模宅地については20%の軽減をする等の税額軽減措置がとられているのが実情です。(ただし、個人または中小企業が所有するものに限られます。)
 このように、宅地に対する固定資産税等の課税は複雑になっており、その宅地の税額等を調べることは簡単にはいきません。厳密にはその年度の課税にかかる納税通知書に添付される「課税明細書」を基にしなければ厳密にその宅地の個別の税額は把握できないのです。
 こうした事情からか、今回の実態調べにおいても、その税額を把握できた事例は全体からみると少ない状況にあり、限られた地域における限られた事例の分析結果となっていることは否めません。 このことを踏まえて参考にして頂ければと思います。

「表6」’商業地等の宅地と住宅用地の課税の仕組み(平成26年度)
  (注1)政府税制調査会第1回基礎問題小委員会(平成26年5月12日)資料より抜粋。
  (注2)評価額が急上昇した場合であっても、各年度の負担増は、原則、本来の税額の5%が限度。
    (=当該年度課税標準額を、「前年度課税標準額+評価額(×住宅用地特例率×5%」により算出)。
  



(公租公課の近時の推移)
 前述のとおり、土地の公租公課は、原則、3年に一度評価替え(見直し)が行われる評価額をもととするその年度の課税標準額により課税されるが、地価の上昇等を反映してその評価額も上昇すると、その評価額に対するストレートの課税は負担増となることに配慮し、一定の減額特例等の調整措置を行った「課税標準額」によって課税されていいます。
 従来、その一定の調整措置等によって、課税標準額は地価が上昇時にも相当低位に抑えられてきたので、バブル崩壊後における地価の下落を反映してその評価額は下げられたとしても、課税標準額はさらにその評価額よりも下回っていたというのが実態でした。
 このため、その評価額の一定水準に達するまでは課税標準額を引き上げざるを得ないということで、バブル崩壊以降、地価が下落局面に転じているにもかかわらず、固定資産税等の課税標準額は引き上げられてきました。
 特に、「土地基本法」制定による平成4年の公的土地評価の均衡化・適正化を受けての固定資産税評価額の大幅改正が、平成6年度から実施されたことに伴い、固定資産税も大幅な増税となりました。
 これにより地価が下落傾向にもかかわらず、固定資産税等の公租公課は平成8年度まで上昇する状況となりました。
 そして、平成9年度の基準年度において、ようやく地価の下落が反映されることになりました。特に商業地の公租公課も平成9年度以降は減額されることとなったのです。
 この減額はその後6年間続いたのですが、景気回復等を受けて、平成15年度からは微増傾向となり、こうした傾向は平成19年度頃まで続きました。
  平成18年頃から地価が上昇傾向になったことを受けて、平成21年度の評価替え年度には非住宅用地も住宅用地も評価額が上昇しました。
 但し、負担増の軽減措置により、税額への影響は緩和されており、平成24年は景気の低迷期にもあたり、評価額は再び下落に転じました。幸いにも、平成21年の税負担急増土地に係る条例減税制度のおかげで、変動はそれほど大きくなく、概ね横ばいの状況で継続しています。
ただ、ここ最近は地価の上昇に伴って、平成29年時点では横ばいであった地点も、平成30年からは評価替えにより土地の公租公課が上昇に反転する地点も多くなってきています。そのため公租公課が上昇したとして、増額改定がなされている事例も以前より多くみられるようになりました。


(3)継続地代(支払べース)の公租公課に対する倍率
 従来より、地代の改定は、その原価(必要諸経費)である公租公課の増徴を理由とし、その公租公課の一定倍率によって改定額を決定するケースが多い実態にありました。このため、地代改定にあたっての適正地代の鑑定評価においても、賃料評価に定められる一般的な四手法(差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法)の 他に、検証手段として「平均的活用利子率による方法」や「公租公課の倍率法」が広汎に採用されてきました。
 そして、第11回の調査(平成15年調査)よりは、そうした地代市場の実態を踏まえて公租公課の倍率についても調査をしています。
  その東京都23区における今回調査の平均倍率を見ると、44頁の「別表bS」に示すとおりであり、
 平成30年1月〜4月現在においては
 商業地系 ・・・ 4.37倍
  住宅地系 ・・・ 4.60倍
   となっていました。
 なお、住宅地系の倍率が高い傾向にありますが、これは住宅用地の減額特例により、住宅用地の課税標準額が商業地(非住宅用地)のそれより低位水準に抑えられていることから、公租公課も相当に低位となっていることに起因するものといえます。
 もっとも、商業地系に分類されている事例の中にも用途が店舗併用住宅等で実質的に小規模住宅課税となっているもの等が含まれている点にも留意が必要です。
   また、前回(平成24年1月1日)現在の調査においては、
  商業地系 ・・・ 3.81倍
 住宅地系 ・・・ 4.25倍
でした。
 今回、商業地系、住宅地系ともにその倍率が若干上昇していますが、これらは前回調査と同一地点の事例とは限らず、地域に偏重し、また、特に事例数の多少にもより、倍率の平均値に偏りが出ていることが原因と考えられ、これらをもって倍率が高まったと判断するのは若干問題があるかもしれません。
 もっとも、商業地系に分類されている事例の中にも用途が店舗併用住宅等で実質的に小規模住宅課税がとなっているもの等が含まれている点と、実際には純粋な非住宅用地として課税されている割合は案外少ないことが分かってきました。
また、前回(平成27年1月1日)現在の調査は以下の通り。
 商業地系 ・・・ 4.05倍
  住宅地系 ・・・ 4.35倍
今回、商業地系、住宅地系ともにその倍率が若干上昇していますが、これらは前回調査と同一地点の事例とは限らず、地域に偏重し、また、特に事例数の多少にもより、倍率の平均値に偏りが出ていることが原因と考えられ、これらをもって倍率が高まったと判断するのは若干問題があるかもしれませんが、地価が上昇しているが故に上昇改定がなされ、大幅改定がなされた事例については、若干倍率が上昇しているものも見られており、全く無視することもできません。
ところで、公租公課倍率法は、表面的には、税額の何倍ということで、わかり易い反面、土地の利用状態によって金額が大きく左右されます。というのは固定資産税が土地利用によって大きく左右されるためです。また、一体画地のうち、一人の借地人が純粋に商業用(非住宅)で使っていたとしても、他の借地人が居住用で使用していた場合には、画地全体が小規模住宅として課税されているというケースもあります。
税制をより深く知って頂くことと、周辺の用途と対象地の用途が同じであるか等を確認する作業が重要になります。
かつては、公租公課の倍率を単純に考えて他の当事者と比較して問題なかった時代もあったのですが、昭和後期から平成に入り、大きな税制の変化がありました。
具体的には、公租公課が地域の地価水準だけでなく、現実に建っている「建物の用途(住宅・非住宅)等」によっても大きく税額が変わってくるようになってきたのです。
固定資産税の住宅用地特例を年代順に示すと以下の通りです。
昭和48年度 住宅用地特例創設  特例率1/2
昭和49年度 小規模住宅用地特例創設 特例率1/4
平成 6年度 住宅用地特例拡充 小規模住宅用地 特例率1/4→1/6
平成 6年度 住宅用地特例拡充 一般住宅用地  特例率1/2→1/3
注)商業用の店舗でも住宅等が併用されるものであれば、その程度に応じて住宅用地や小規模住宅用地の適用対象となり、緩和が受けられます。
長い契約期間のうちには建替えや建物の用途を変更することも必要となる場合があります。そういった当事者に税の知識がないと、思わぬ混乱が生じる場合があり得ます。
例えば、小規模住宅の公租公課は、
・固定資産税評価額×0.1667程度の課税標準を基準に税額が算定されますが、これが非住宅(事業用)に建替われば、
・固定資産税評価額×0.6〜0.7程度の課税標準となりますので、住宅用地と非住宅用地では最大4倍近く公租公課の査定が変わる可能性があります。もちろん、個人や中小企業の場合には別の特例等もありますので、単純にそれほど上がらないこともあるのですが、いずれにしろ住宅や店舗併用住宅を完全な非住宅の店舗に建替えると、固定資産税が相当程度高くなるので、公租公課倍率だけを基礎に地代の交渉をしていると、税額に連動して地代が著しく高額に査定されてしまう可能性がありますのでご注意ください。
そういった意味で、現実に非住宅用途の事例と、併用住宅、完全な住宅利用の場合では公租公課倍率はどのように変わってくるのかという点に関しても、今回調査から検討をしてみました。
その東京都23区における今回調査の平均倍率を見ると、45頁の「別表bS−2」に示すとおりであり、
 平成30年1月〜4月現在においては
 非住宅用途 ・・・ 2.86倍
  併 用 用途 ・・・ 5.03倍
  住 宅 用途 ・・・ 4.36倍
非住宅、併用、住宅の区別といっても残念ながら完全には、事業用か否かまで厳密に課税明細等によって確認できているわけではありませんので、アンケートベースの回答と一部登記記録を取得し、グーグルマップ等から分析した状態を含めての判断によってこれらの用途を区別していますが、そうすると、やはり傾向としては課税が非住宅である可能性が高い純粋な業務用地の公租公課倍率は併用住宅や住宅地に比べると低いことが確認されました。
なお併用の方が住宅よりも高いのは、おそらく併用住宅の方が担保等としての収益性があり、賃料負担能力が住宅よりは高いけれども課税は住宅とほぼ同じであるが故に、倍率が低く査定されているのではないかと分析されます。


おわりに
以上、「継続地代の実態調べ」の概要について述べてきましたが、今回は地価が相当に上昇してきています。 こうした地価動向にあっても、地代の原価である固定資産税等は若干増加傾向で地価の追いであること、また、政策的意図等から、税の特例措置が継続されていて、税負担は高度商業地であっても年に1割以上は上昇させないことになっています。
今回は固定資産税が若干の上昇をみせたことから、3年の期間中に改定されたものは基本的には上昇改定。あるいはこの期間中でない場合にもその前の期間か、平成30年4月以降に上昇改定がなされる予定という回答もございました。
地代の改定は1年毎に算定式を決めて改定される場合もありますが、そうでない場合には、3年毎の固定資産税の評価替えの時期、あるいは過去の10年分・20年分・30年分の差額を更新時期に大幅に改定するような事案も多く、長い間横ばいを保ちながらも、時折大幅改定していくことも一般的です。
今回は、改定があれば、上昇改定が中心で、ほぼ下落改定がなされることは無いことは確認されました。
ところで、旧借地の数は減少傾向にある中、なかなか底地を売ることが無く、数が減少しないものがあります。それは宗教法人による借地です。
法人税施行規則第4条により住宅地については公租公課の3倍以下であれば収益事業に該当しない「低廉な地代」とみなされ、法人税が課せられない仕組みとなっています。もともと住宅不足を解消するという至上命題があり、低廉で貸し出せば公益事業と認める制度が設けられたわけです。
そのため、寺社等公益事業者が地権者の場合には、公租公課の3倍以下の地代であっても争いとなる例は少ないです。
一方で、このような恩典が与えられず、法人税や所得税が課せられる地主にとっては、低廉な「住宅用地」の公租公課の3倍以下の地代では、とても不動産投資としての採算がとれるものではないのが実情でしょう。
そんな中でも、多くの寺社の事例等に引っ張られて地代が低廉に抑えられ、これが相場と認識されている例もあったりします。
勿論、一般法人や一般個人は寺社等とは異なる水準であるべきということで、投資として適切な高い倍率ないしは利回りで貸されているものも多くありますが、このような様々な事情が混在した事例の平均値が今回のものである点にご留意頂ければと思います。
また、商業地系では、あまり税制面でも恩典が与えられていない非住宅の事例と、小規模住宅の恩典が与えられている店舗付住宅の事例とが混在していますので、同じ公租公課倍率であっても、土地に対する利回りは大きな差異があります。
このように、単に公租公課倍率のみをみても、適切な地代の査定を行うことはできません。一つの指標だけに目を向けるのではなく、活用利子率や、その他契約の経緯、当事者の権利意識等も十分考量し、複眼的な見方をされることにより、より適切な地代水準のあり方を探ることができるのではないかと考えます
。 本書を取纏めた私共でさえも、高い地代もあれば安い地代もあり、どれを参考にすればよいかわからない状況にも陥りがちです。低廉な地代であっても他に使い道が無いので地代が安くても合理性があるという地主や、反対に商業地で本来であれば自らがもっと有効活用ができるにも拘わらず、土地を貸しているが故に全く採算が取れないと、不満が蓄積している地主もいらっしゃいます。
  また、借地人にしても、権利金を払った覚えがないにも拘わらず、長年借りているので借地権があるのだから低廉なままでなければならないと主張する方もいれば、権利金を払っていないし割安な地代なのだから今回の値上げは致し方ないと値上げに応じる借地人もいらっしゃいます。
その他、「定期的に更新料を払っているか。」といったことによっても当事者の借地権に対する認識に大きな違いが生まれてくるでしょう。
これらが長年にわたって継続すれば、事例間の地代に大きな差が生じてくるのは当然なのかもしれません。
様々な契約当事者の様々な経緯の事例が羅列されていますが、いずれも現実の賃貸事例であります。
これらが収集されている本書に、皆様のさらなる緻密な分析が加わることによって、社会の何かしらのお役に立つようになれば、これに勝ることはありません。
 

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